「BOHBO No.5」に見る桑田佳祐の考察

サザンの「BOHBO No.5」という曲がある。作詞作曲は桑田佳祐。知らない人のためにリンクを張ろうとしてYouTubeで検索したら、ちょっと前までは簡単にPV等のオリジナル音源がいくつも見つけられたのに全部削除されていた。
この「BOHBO No.5」の歌詞の一節に「人は誰もが舞台(ステージ)に立っている 輝く主役(ほし)になれ ひとりひとりの命にゃ意味がある 生きてく理由(わけ)がある」という部分がある。似たような歌詞の歌があったようにずっと思っていた。そう、SMAPの大ヒット曲「世界に一つだけの花」のことである。断っておくがSMAPに関しては関心があるわけでも、ましてファンでもないので詳しい事は知らない。ただ理由も無くSMAPの曲の方がサザンより後で発表されたものと考えていた。
Wikipediaを斜め読みして調べるとSMAPの「世界に一つだけの花」シングルヴァージョン発売日は20033月で2003年の紅白にこの曲で出場している。収録されたアルバムはこれよりもっと早いのかもしれない。
一方サザンの51stシングルとして「BOHBO No.5」が発売されたのが20057月であった。当初の予想と事実は正反対であった。桑田がSMAPの「世界に一つだけの花」をヒントにこの一節を書いたと考えるのが順当なところだろう。
さて今回書きたいのは以上のことではなく、ここまではむしろ前置きである。






誰もが「えーことゆうとる」と感じるであろう上記の歌詞のすぐ後に続いて、実は思わずズッコケそうになる以下のような歌詞が続く。
Hey,You gotta Hustle!! 燃えろよボイン!!
「みんなでHustle!! やらせてクイーン!!
ここがまさに桑田佳祐の面目躍如といったところと言えるのである。
真面目に人生の応援歌を歌い上げていると思っていた桑田が急にエロに転じる訳だから普通の人なら一体全体どうなってるの?と思いたくなるであろう。このように桑田の中には高潔な人格者といった側面と、思わずニヤリとして親しみを感じる助平な男といった側面が矛盾無く同居しているのである。また桑田はシャイな性格で自虐的に自らを表現することが多く、例えば「ロックンロール・スーパーマン」の歌詞に「甘い、弱い、何も出来ない僕が」とか「しゃアない、トロい、役に立たない僕が」と表現しているのは自らのことであると思われる。
この他の桑田の楽曲にもかなりの頻度で女性に振られる「甘い、弱い、何も出来ない僕が」「しゃアない、トロい、役に立たない僕が」のような桑田自身をモデルにしたと思われる愛すべき男性を登場させている。ここがまさに映画の「寅さん」と対比される所以なのである。
今や日本のスーパースターとしての地位を確立している桑田だが自分を見失うことなく冷静に自分の内面を見つめる視線を保ち続ける能力には舌を巻くばかりである。3年前にサザカラに参加するまでの僕はライブに行った事もなくファンクラブにも入っていない「なんちゃって桑田ファン」の一人であった。筋金入りのサザン・桑田ファン集団であるサザカラメンバーの影響で関係書籍を読破し、生まれて初めてライブなるものを経験し、聖地茅ヶ崎で少年時代の桑田を良く知る方々の証言を聞き、彼に対する認識が誤っていたことに気付いたのである。
それまでも彼の楽曲の素晴らしさは認めていたが、私生活では女好きで女にだらしない男に違いなく原坊がきっと我慢してるんだろうと考えていた。ところが周辺情報に接する機会が増えるに従い彼の誠実な人柄がどんどんクローズアップされていった。それにまして驚きは今日のようにビッグな存在になっても謙虚な一般人の視線を全く失っていないことである。普通なら周辺には金だけが目当てのイエスマンばかりが群がり、やがては自分を見失い尊大な態度に変わっていくものであり、そんな実例を数え切れず見てきた。
それなのにどうして桑田はしっかりと自分の座標軸を保ち続けられたのか?という疑問をずっと持っていたが、本人の資質以外にはデビュー以前の人間関係を非常に大切にしていることが大きく寄与しているのではないかと考えるに至った。今でも彼が茅ヶ崎を非常に大切にしているのは周知の事実だ。野球小僧だった頃の桑田少年の原点を知る人々との人間関係を維持していることが、ずれそうになる座標軸を修復することに大きな役割を果たしていると推測する。
さて再び「BOHBO No.5」の歌詞に戻る。人間桑田の中には一見矛盾してる要素が同居していると前述した。100%の人格者もエロ人間もいない。やっと何とかバランスをとりつつカオスの中で生きているに過ぎない。だからこそエロ好き・愛妻家・ダメ人間・誠実人間が相互に矛盾しながら同居してる桑田を愛して止まない人達がいる。
これからもそんな人間桑田に期待したい。矛盾こそ人間なのだから。




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